「…に対する」や「…に対して」は多様な英語表現が可能であり、一筋縄ではいきません。

「リスクに対するリターンを把握する」という一節なら、よく見かける「against risks」という間違った表現ではなく、

calculate a return in relation to risks

または

calculate a return relative to risks

が適訳です。

「環境効率とは、CO2排出量、資源消費量など、環境負荷当たりの製品、サービスの質(付加価値)であり、ファクターとは、基準製品の環境効率に対する開発製品の環境効率の比である。」という一文を英訳するなら、

Environmental efficiency is defined as the quality (added value) of a product or service that is obtained in relation to the burden imposed by (「from the use」ではない) environmentally hazardous elements such as carbon dioxide emissions and/or the consumption of natural resources. An environmental factor is defined as the ratio of environmental efficiency of a product being newly developed to that of a reference product.

が適切です。

「軸に対するXの傾き」に相当する英語表現は、

an angle of X with respect to an axis

ではなく、

an angle of X relative to an axis

です。

「この分離ブロックは、ピックアップローラーの用紙送り出し方向に対して傾斜した分離案内面を備えている。」という一文も同様で、

The separation block has a separation guide face which is inclined with respect to a direction of feeding sheets by the pick up roller.

ではなく、

The separation block has a separation guide face which is inclined relative to a direction in which sheets are fed by the pick up roller.

が適訳です。

「Xに対して前後方向に位置調整する」という一節も、「with respect to X」という表現を使うのではなく、

adjust a position in a longitudinal direction relative to X

と訳すのが適切です。

「この要求に対してA装置はデータリストを返信する。」という一文を英訳するなら、

For this request, apparatus A returns the data list.

ではなく、

In response to this request, apparatus A returns the data list.

が適切です。

「Aに対する画像の向きが設定されると」という一節を英訳するなら、

if the direction of image with respect to A is set

ではなく、

if a direction of an image is set relative to A

が適切です。

「回転中心に対するカム突起の先端方向」に相当する英語表現は、

the front end directions of the cam projections with respect to the center of rotation

よりも、

the direction of the front ends of the cam projections relative to the center of rotation

の方が好ましいでしょう。

「用紙送り出し方向に対して傾斜した」という一節を英訳するなら、

inclined with respect to a direction of feeding the sheet

よりも、

inclined relative to the direction in which the sheet is fed

の方が適切です。

「繰り返し使用に対する寿命が短いものであった」という一節なら、

the lifetime is short for repeated use

ではなく、

lifespans have been curtailed as a result of repeated use

が適訳です。実に訳しにくい表現ですが、最初の訳文で使用されている「for」が不適切なため、書き手が伝えようとしている内容が相手に伝わりませんし、「lifetime」を単数形で使用している点も誤解を招く可能性もあります。

「将来への夢と自らの職能に対する誇りを失っている」という一節を英訳するなら、

they have lost their dreams for the future and their pride on functions

よりも、

they have forsaken their dreams for the future and they have lost pride in what they are doing

の方がはるかに適切かつ自然です。英語の「function」は、日本語の「職能」のような肯定的な意味合いを持たないため、最初の訳文では、英語圏の人の大半が理解できないでしょう。校正担当者は、日本人翻訳者が伝えようとしていることを正しく把握するのに、英訳文を和文に訳し戻して再び自然な表現で英訳するしかないという場面に度々遭遇します。この一節は、そのような状況を示す好例でしょう。