367. 「時」に関する表現: 「あらかじめ」、「事前」、「in advance」、「without prior notice」、「beforehand」、「fore-」、「preliminary」、「initially」
「あらかじめ」および「事前に」に相当する英語表現としては、主にその後の行為に関心が向けられていれば、どちらも「in advance」が最適であることが多いでしょう。一部の翻訳者が時々使用する「beforehand」も良いのですが、後続の内容と自然につながる「in advance」の方がやや優れています。
「あらかじめ塗られた」という一節を英訳するなら、「coated preliminarily」ではなく、「coated in advance」が適切です。
「あらかじめ配置された」という一節を英訳する場合も、「disposed preliminarily」ではなく「disposed in advance」が妥当であり、その後の進展について述べられている状況であれば、「disposed initially」が適切です。
「initially」は、後の出来事に重点が置かれている場合と、最初に起こった出来事との対比が述べられている場合に、「あらかじめ」の訳語として使用できます。
「今後の設計変更などにより、内容が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。」という一文を英訳するなら、
The contents may be subject to change without prior notice due to the design changes etc. in future.
よりも、
The contents may in future be subjected to changes without prior notice, as a result of factors such as changes in design. We would be most grateful for your understanding.
の方が適切です。主に語順を修正しましたが、最初の訳文でも使われている「without prior notice」は、「あらかじめ」の意味を英語で伝えるのに非常に効果的です。
「あらかじめ」のもう1つの例として、「当日は多くの来場客が見込まれるため、やむを得ず近隣住民の皆様へご迷惑をおかけする恐れがありますので、あらかじめご了承ください。」という一文なら、
On the days in question substantial numbers of visitors are expected to attend these event, and we fear that, for reasons beyond our own control, there is a very real possibility that residents in surrounding neighborhoods will be subjected to considerable inconvenience. We would be most grateful for the understanding of all persons likely to be affected and we do hope that you will accept our sincere apologies in advance for any inconvenience that may be caused.
が適訳です。
「担当インストラクターと日本語での日常会話が可能な方に限りますので、あらかじめご了承ください。」という一文なら、
Please also be forewarned that participation in these events will be limited to persons who are capable of conversing with the instructors in charge in the Japanese language.
と訳すのが効果的です。この例では、「あらかじめ」の意味が「forewarned」という語に組み込まれています。接頭辞「fore-」は、それ自体で「in advance」を意味し、「forecast」など、一部の動詞でも使われています。
「事前準備」という表現では、「事前」が形容詞として使われていますが、英訳としては、「preparatory activity」よりも「advance preparations」の方がはるかに優れています。
「preliminary」はやや意味が異なり、重要度の高い行為への準備として実施される行為に対して使われます。準備も全体の一部として不可欠であるとみなされる点が「in advance」との違いです。両者の違いを示すわかりやすい例として、スポーツ競技の「a preliminary round (予選)」という表現が挙げられます。チームは、予選および本大会への出場のため、「in advance (事前に)」、すなわち、主たる行為が始まる前に選出される必要があります。言い換えれば、「preliminary」は枠組みの内側、「in advance」は枠組みの外側に位置しているということです。