349. 「concomitantly」と「~に伴い」
「大きな会社になるほど、販売管理費率が高くなってまいります。」という一文の適訳は、
The bigger a company gets, the ratio of expenditure accounted for sales administration rises concomitantly.
です。この例文は、セクション348で挙げた例「距離が長くなるにつれて分解度が低くなる」と似ていますが、同じではありません。セクション348の例では、「距離」と「分解度」の変化が比較されており、その変化の度合いは互いに密接に関連している、つまり、「距離の長さに比例して分解度が低くなる」ということが示唆されています。これに対して、本例では、比較の対象が「会社の規模の拡大」と「販売管理費率の上昇」であり、その変化が、測定の容易な単位や、「長い」と「高い」などの明確な言葉で表わされてはいません。会社の規模の拡大が販売管理費率の上昇率と必ずしも比例していると直接示すものは何もありません。この話者の意図はシンプルで、会社の規模が拡大するにつれて販売管理費率も上昇するが、必ずしもその割合は同じでないし似通ってもないということです。和文では「ほど」が使われていますが、比較されている内容は非定量的であると言い換えることもできます。このような場合には、「commensurately」よりも、「naturally accompanying」や「associated」を意味するだけの「concomitantly」の方が適切です。
「こうしたグローバル化の進展に伴い、世界規模で企業間競争が激化し、企業の再編が活発化した。」という一文の適訳は、
Concomitantly with this trend towards globalization, competition between companies intensified on a global scale, and restructuring of enterprises increased in intensity.
です。
「燃料電池の開発が加速するのに伴い、開発環境の整備も進めている。」という一文も同様で、
Concomitantly with acceleration in the development of fuel cells, progress is also being made in securing an appropriate development environment.
が適訳です。本例も先述の「こうしたグローバル化の進展に伴い」の例も、「~に伴い」の意味は「naturally accompanying」です。どちらの例も、主節と従属節との間に、「commensurately」の使用が妥当と判断できる明確な相関関係が窺えません。