231. 形容詞と過去分詞

日本の技術翻訳者は、形容詞的に用いることのできない過去分詞を名詞の前に置いて、形容詞的に使用する傾向があります。特許出願書類などにおいては、複雑な部品や手順を説明するのに、形容詞的に使用することが例外的に妥当な場合もあるでしょうが、正確に伝えるためには、「a completed process」などの表現ではなく、「a process that has been completed」または「a process that had been completed」の方が好ましい場合が多いでしょう。

また、別の観点から言えば、「a completed process」などの表現は、既存のことを説明したり、それに対して「名称」を付けたりする場合に用いられ、「a process that has been completed」などの表現は、初出のことを説明したり、定義したりする場合に用いられます。

印加電圧」は「applied voltage」と訳されることが少なくありませんが、一般的な文書では、「voltage applied」の方がはるかに自然です。

印加回数」も同様で、「applied number of times」よりも、「the number of times applied」の方がはるかに自然です。

要求された特性」も、「desired characteristics」よりも、「the characteristics desired」の方が良いでしょう。

「AとBとの相対位置がずれた状態」は、

in a state in which the relative positions of A and B disagree

ではなく、

in a state in which the relative positions of A and B are not compatible with each other

です。

「製紙原料中の未溶解片」は、

non-melted pieces in the paper-making material

ではなく、

pieces in the paper-making material that have not yet melted

か、文脈によっては、

pieces in the paper-making material that had not yet melted

です。

気化した燃料」は、「evaporated fuel」ではなく、「fuel that has evaporated」です。

実測電圧」は、「actually measured voltage」よりも、「voltage that has actually been measured」の方が適切です。

試験されたウエファー」も、「a tested wafer」より、「a wafer that has been tested」の方がはるかに好ましいでしょう。

衝撃印加品」も同様で、「impacted items」よりも、「items that have been subjected to impact」の方がはるかに適切です。

また、落下品、衝撃を加えた製品は使用しないでください。」という一文であれば、

In addition, do not use the dropped or impacted ECUs.

ではなく、

Furthermore, do not use ECUs that have either been dropped, or been subjected to any kind of impact.

です。

同様に、「積層された用紙の方向」であれば、

in a direction of stacked sheets

よりも、

in a direction of sheets that have been stacked

と訳した方がはるかに適切です。

重ねられた状態の用紙」も、「stacked sheets」より、「sheets that have been stacked」と訳した方がはるかに良いでしょう。

「Zは、1種類の高速工具鋼のみで構成されており、2種類の鋼材が混在するものではない。」という一文は、

Z is made of only a single kind of high speed tool steel, and is not made of mingled two different kinds of steel materials.

ではなく、

Z is made of only a single type of high speed tool steel, and is not made of any two different kinds of steel materials that have been blended together.

と訳すのが適切です。この例の基本的な問題は、一次翻訳者が形容詞的に使用した過去分詞「mingled」は形容詞的に使用できないという点です。「混在する」は、「that」を用いた関係詞節内で現在完了形で表現するのが最も自然でしょう。「混」という「漢字」は、「blending together」あるいは「mixing in」という過程をたどっていることが示唆されており、この点を英訳に反映させることが不可欠であることを翻訳者は理解しておく必要があります。また、「is not made of a mixture of two different kinds of steel materials」や「is not made of two blended different kinds of steel materials」という表現の不適切さを理解していない翻訳者も見受けられますが、過去分詞「blended」も、このように形容詞的な使い方は通常しません。さらに重要なのは、日本語の「2種類の鋼材」という表現が、特定の鋼材ではなく、不特定の鋼材という意味で使われている点です。英訳時には曖昧な表現を避け、単に特定の2種類の鋼材だけでなく、可能性のある2種類の鋼材の組み合わせをすべて排除する必要があります。

落下によるECU本体やブラケットなどの変形により、組み付け不良の恐れがあります。」という一文であれば、

Deformed ECU body or bracket by dropping may cause assembly failure.

よりも、

An ECU main body or bracket that has been deformed as a result of being dropped may make it impossible to assemble the ECU.

の方がはるかに適切で自然な翻訳です。最初の訳文は文法的に間違っています。

同様に、「落下によるコネクターの破損により、コネクターの嵌合不良の恐れがあります。」という一文も、

Damaged connector by dropping may cause fitting failure.

より、

There is a danger that a connector that has been damaged as a result of being dropped may not be able to be fitted.

の方が適訳です。

人体に帯電している静電気」であれば、

the static electricity built up in human body

よりも、

static electricity that has built up in the human body

と訳すのが適切です。

「それはZの測定対象外の動物のため、データ取得されていない。」という一文であれば、

Data was not acquired because it was an excepted animal from the Z measurements.

よりも、

Data was not acquired because this was an animal that had been exempted (好ましさという点でやや劣るものの、「excepted」あるいは「excluded」でも良い) from the measurements of Z.

と訳す方が好ましいでしょう。

新たに引用されたZに基づく拒絶理由に納得できません。」という一文は、

We can not agree with reasons for rejection on the basis of newly cited Z patent.

と訳すよりも、

We can not agree with the newly cited reasons for rejection on the basis of Z.」の方が適切であり、

We can not agree with the reasons that have been newly cited for rejection on the basis of Z.

ならさらに良いでしょう。最初の訳文とあまり違いがないように見えますが、「newly cited」が、修飾する語「reasons」の前に置かれていることが重要です。

よって、請求項1は、引用発明2によって公知となった構成要件の一部を、必要に応じて単に付加して結合したものであり、当業者が上記引用発明1、2により、容易に発明をすることができたものであります。」という一文は、

Therefore, the invention of claim 1 has been made by merely adding and combining a part of the constituent elements that have been widely known by Cited Invention 2 to the constitution of Cited Invention 1 in accordance with necessity, and would have been easily thought out by those skilled in the art from Cited Inventions 1 and 2 described above.

ではなく、

Thus, the invention of claim 1 has been made by merely adding a part of the constituent elements that have become widely known as a result of Cited Invention 2 to the configuration of Cited Invention 1, and by then combining them as appropriate. Accordingly, claim 1 could easily have been devised by those skilled in the art on the basis of Cited Inventions 1 and 2 described above.

が適訳です。

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