44. 日本語の現在進行時制:英語の過去時制を使用した翻訳
「今年、私はある研修会の終わりに、管理職に向かって同じ話をしています。」という一文の適訳は、
Earlier this year I addressed a group of management trainees at the end of a training course, and I spoke to them in similar terms.
です。これは、日本語の現在時制に対して英語では過去時制を用いる必要がある極めて対照的な一例です。
「4月からスタートしています。」という一文も、英訳すると
We got off to a start in April.
になります。こちらは、過去完了時制を用いた前章の例とは対照的な表現です。英語の「got off to a start」と「started」は、時間軸上の1点を表しますが、少なくとも「got off to a start」を使用した場合には、日本語の表現に示唆されるように、行為が継続しているという明確な含みもあります。厳密に言えば、このような「スタート」の使い方は、翻訳時に誤読される可能性があります。代替案を提示するなら、
This operation has been continuing since April.
でしょう。
「さらに、知的財産担当より、当該案件を担当した担当者へ問い合わせを行った結果、前述の事業化断念の経緯が判明する」という一文を英訳するなら、
Further, the person in charge of Intellectual Property inquired a person in charge of the matter, which revealed that the above-mentioned developments that the commercialization had been given up.
よりも、
Further, the person in charge of intellectual property approached a person in charge of the commercial aspects, and it was duly confirmed that any plans there may have been for commercialization had indeed been abandoned.
の方がはるかに好適です。この文は、日本語の現在形を英訳するのに「it was duly confirmed」という過去時制の受動態を使用した例であり、主節よりも前に発生した事象を述べるのに「had indeed been abandoned」という大過去を使用した例でもあります。