24. 好適および不本意な状況と含意 – risk, danger and wamimgs:risk、danger、warnimgsと、 「事前対応」および「場合に備えて」
「低級音の可能性がある」の英訳は、
have possibility of low-grade noise
ではなく、
run the risk of low-grade (or ‘squeaky’) noise
です。
「触れる可能性」も同じく「run the risk of being touched」と訳すのがベストでしょう。
「…を見逃す恐れがある」は、「there is a danger of overlooking the fact that …」です。
同様に、「強度が低下する恐れがある」も、
will be provided with a deteriorated strength
や
may be provided with deteriorated strength
ではなく、
there is a danger that X will experience deterioration in strength
です。
「航空機の運航の安全に支障をきたす恐れがある」に対する好ましい訳文は、
this device may interfere with safe navigation of aircraft
ではなく、
there is a danger of this device interfering with safe navigation of aircraft
です。
「このような会社は「広告をクライアントに販売する」という目的があり、そのようなものが必要のないクライアントにとっては利益相反になる可能性もあります。」
という一文は、
The main object of that kind of company is to sell advertisement to clients, and for a client that does not need that sort of thing, a conflict of interest could arise.
と訳すよりも、
The main objective of companies of that ilk is to sell advertisements to clients, and for clients that do not require that kind of service, there is a danger of conflicts of interest arising, and of a waste of financial resources.
とした方が良いでしょう。日本語の「そのようなもの」はやや直訳的で品がないので、英語では、「that sort of thing」よりも「that kind of service」とするのが好ましいでしょう。
これらの文を翻訳するにあたっては、不本意な結果をもたらす可能性があることを原則として明示することが大切であり、「danger」や「risk」といった単語を使用するのが1つの方法であることは一目瞭然です。大概の場合において、好適な状況とそうでない状況を区別するための語彙は日本語と同様英語にもたくさんあり、英語ではそのような区別を明確にすることが常に最善の姿勢です。英語の「possibility」は概ね、不安よりも前向きな予想という印象を与えます。
「重篤な反応のある患者は、再発の場合に備えて、回復後24時間は病院で観察されるべきである」
という文を英訳するなら、
「Patients with severe reactions should be observed in the hospital for 24h after recovery in case of relapse.」
ではなく、恐らくは
「In order to forestall any danger of a relapse, patients with severe reactions should be observed in hospital for a period of 24 hours after coming around from an operation.」
でしょう。「再発の場合に備えて」を「in case of relapse」と訳すべきではありません。「In case of」は通常、存在する状況か、少なくとも「起こる可能性のある」状況を言及します。ただしこの文は、英語では「…に備えて」という表現が根底的に持つ意味を正確に伝えることの重要性を示す好例であると同時に、好ましくない状況が発生するのを防ぐという意味合いを伝える文句が英語では必要であるということを示しています。このような根本的な点を認識しておくことが、良質な翻訳を生み出すための鍵です。
もう1点、「回復」という日本語が使われていることが、別の根源的問題をもたらしています。英語の「recovery」は通常、病気が全快したという印象を伝えます。しかしこの例では、「回復後」がそのような状況とは全く異なるということが明白です。どのような状況なのか正確にはわからないので、翻訳者としてはやはり想像するしかありません。もう少し前後の文脈あればこの文の意味も明らかになるかもしれませんが、いずれにせよこの文は、意味が曖昧になり得る語句を使うべきでないということを端的に示すもう1つの例と言えるでしょう。
3点目は、「in the hospital」が文法的に間違っているということです。ここでは一般論としての助言が述べられており、その対象がある特定の病院に限られるということはなく、対象となる病院はたくさんあります。このケースでは、「in a hospital」とするよりも、「in hospital」というシンプルな前置詞句の方がはるかに好ましく、英語圏ではこの言い方が広く使用されています。
同様に、「コーティングが剥げ、剥がれた箇所から錆が進行する恐れがある」という一節を英訳するなら、
damaged coating may promote rusting
ではなく、
there is a danger that the peeling off of coating may lead to rusting
とするのが適切です。この文も、英単語が正しく使用されている好例です。「promote」には肯定的な含みがありますので、望ましくない状況、つまり錆を招く過程という状況では不適切です。
「一度分解すると防水性が保たれなくなり、ECUが動作しなくなる恐れがあります。」
という文は、
Overhauling ECU once may loose water tightness construction and cause non-function.
ではありません。この英文は、直訳が混乱を招く極端な例です。大幅に修正する必要がありますが、
Overhauling an ECU even once may trigger a loss of imperviousness to water, and there is accordingly a danger of malfunctioning occurring.
とすれば良いでしょう。
同様に「衝突予測装置」も、「collision predicting device」ではなく、「collision forewarning device」です。何かをpredictまたはforecastするのは簡単なことであり、英語だとこれらの単語は、本人が結果を気にかけていないという印象を伝えます。しかしこのような装置の目的は、好ましくない事象が起こる可能性が高いと警告することですので、英語としては「forewarn」が適切です。