498. 法令用語と企業で用いられている日常語との区別の必要性

「図面仕様を満足する」という一節を英訳する場合に、多くの日本人翻訳者が、「shall fulfill」という表現を使います。誤りとまでは言えないものの、民間企業が作成する非法的文書の場合には、一般に「should conform to a drawing standard」の方が好ましいでしょう。

このような特殊な用法の「shall」は法律用語であり、日本以外では、法案の起草あるいは法的拘束力のある文書に限って使われることが多いでしょう。自社の社員に対する指示の場合、日本国外の民間企業であれば大半が「should」を使うので、日本人翻訳者によって「とする」や「べき」などと訳されると、日本国外にある日本企業で混乱や爆笑を招いてしまうこともあるでしょう。

法律英語でない普通の英語での良訳は、日本人経営幹部の見解と指示の両方を正確に伝えやすいので、日本国外の従業員に受け入れられやすいということになります。

翻訳者は、翻訳を請け負う前に、当然のことながら、法令用語あるいは日常語のどちらが適切なのか、まずは依頼文書の性質について慎重に検討する必要があります。

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