「性」が末尾につく単語の正確な意味にも注意が必要です。例えば、「透過性が高い」に相当する英語表現としては、「high penetration」よりも、「a high degree of penetrability」の方が適切ですが、能動的な「penetrability」という語よりも、受動的な「permeability」という語を用いた「a high degree of permeability」の方がさらに優れています。日本語の接尾辞「性」によって示唆されるその状態固有の性質が正確に表現され、さらに原文に忠実だからです。

電気誘導性」に相当する英語表現としては、「a high degree of electrical conductivity」が適切です。

電気接続性や信頼性」なら、「degrees of electrical conductivity and reliability」と訳すのが良いでしょう。

ガス不浸透性」なら、「a high level of impermeability of gases」が最良です。

「AはBより靭性が高い。」という一文を英訳するなら、

A is higher in toughness than B.

ではなく、

A has a higher degree of toughness than that of B.

です。

高い耐水蒸気性」に相当する英語表現としては、

a high hydrothermal stability

よりも、

a high level of hydrothermal stability

の方がはるかに好ましいでしょう。

満足のいく静粛性をXが確保可能」という一節を英訳するなら、

enable X to obtain a degree of quietness that is acceptable

または

enable X to obtain an acceptable degree of quietness

が適切です。

作業性が低く、製造コストの増加を招く。」という一文を英訳するなら、

workability being low to induce an increase in manufacturing cost

という表現を使うよりも、

This leads to a reduction in the level of working efficiency, and increases in manufacturing costs result.

の方が適切です。最初の訳文の「workability」という語は、原文の日本語のような意味合いで使われることはなく、「level of working efficiency」の方がはるかに自然かつ適切な英訳です。また、動詞「result」が、非常に単純ながら効果的に使われています。

「射出融着性が十分ではない」という一節を英訳するなら、

do not have enough injection fusing property

よりも、

do not have an adequate level of injection fusing property

の方が適切です。

「したがいまして、社外に対して透明性を高めていく必要があり」という一節を英訳するなら、

it is accordingly essential to elevate the degree of transparency prevailing in our relations with outside parties

が適切です。

「香りの嗜好性」に相当する英語表現は、アンケートのタイトルであれば、

Preference of aroma

ではなく、

Degree of fondness for aroma

が適切です。

「性」が末尾につく単語でも、「level」や「degree」を使って英訳するのが不適切な場合もあります。以下、いくつかの例を挙げます。

「日本に進出する。それは簡単なことではありません。先進国の中でも排他的な市場性および日本人の持っている外資系企業へのイメージ。どれをとっても容易に進出できるようなイメージはないでしょう。」という一文を英訳するなら、

Branching out into Japan is not an easy matter. There is the closed market nature of Japan, despite being an advanced nation, and the image that Japanese people have of foreign-owned companies. At any rate it is not an image of being able to easily make inroads into Japan.

よりも、

Branching out into Japan is not a simple process. There is a ‘closed market’ aspect to Japan, despite its being an advanced country, and the image that Japanese people have of foreign-owned companies is not necessarily a positive consideration. In any event these two factors combine to create an impression that it is no easy matter to make inroads into Japan.

の方がやや優れているでしょう。1つ目のポイントは、「排他的な市場性」の英語表現には定冠詞よりも不定冠詞を使う方がはるかに好ましいということです。実際に「排他的な市場性」が認められるにせよ、「排他的な市場性」をあたかも明白な事実であるかのように述べるのは誤りですが、定冠詞を使うことにより、事実であることを示唆してしまいます。

2つ目のポイントは、「日本人の持っている外資系企業へのイメージ」という省略された日本語表現で、この一節を英訳するに当たっては、マイナス面を明確に表して「is not necessarily a positive consideration」と詳述するのが最良だということです。

3つ目のポイントは、この文章全体を1つの長い単文とみなした方が間違いなく良いということです。この文章に含まれる情報は、非常にわかりやすくまとまっています。優秀な翻訳者であれば、この点を理解し、日本語の語順にとらわれることなく、伝えるべき情報をすべて網羅した柔軟で自然な訳を生み出すでしょう。

「組み付けの作業性」に相当する英語表現としては、「operability of assembly」よりも、「ease of assembly」の方が適切かつ自然です。

「このため、高速道路や鉄道など交通機関の利便性に優れております。」という一文の適訳は比較的シンプルで、

Therefore, transportations such as expressways and railways excel in convenience.

よりも、

For this reason, transportation systems such as expressways and railways are extremely convenient.

の方がはるかに自然です。

「後者の場合、クレームの表現と整合性がとれていない。」という一文の適訳は、

If the latter is the case, there is nothing to suggest that there is any consistency between the Detailed Description of the Invention and the wording used in the claims.

です。

その他、「性」が末尾につく語で、技術翻訳でよく使われるものを以下に挙げます。

圧縮性: compressibility
操縦安定性: steering stability
新規性: novelty
信頼性: reliability
導電性: conductivity
偶発性 eventuality
蓋然性: probability
剛性: rigidity
引張弾性: tensional elasticity
乖離性: dissociability
感光性: photosensitivity
揮発性: volatility
駆動性: driving performance
粘着性: viscosity
熱可塑性: thermoplasticity
生分解性: biodegradability
制動性: braking performance
「相互作用性」または「相溶性」: compatibility
多発性: frequency
耐摩耗性: wear resistivityまたはresistivity to abrasion
耐食性: corrosion resistivity
対応性: adaptability
多孔性: porosity
多様性: diversity
適合性: compatibility
溶解性: solubility
脆性: brittleness
粒状性: graininess
専心性: applicationまたはdevotion
親和性: affinity
疎水性: hydrophobic property
親水性: hydrophilicity
優位性: predominanceまたはsuperiority

いずれの例においても注意が必要ですが、以上のような性質の度合いが比較されている場合には特に注意を払うべきでしょう。一般に、説明または比較されている性質が測定可能な場合には、「degree」や「level」を使うのが適切です。

「一度分解すると、防水性が保たれなくなり、ECUが作動しなくなる恐れがあります。」という一文を英訳するなら、

Overhauling ECU once may loose water tightness construction and cause non-function.

よりも、

Overhauling an ECU even only once may lead to a loss of imperviousness to water and thus result in malfunctioning.

の方がはるかに適切です。

特許審査官による見解における「周知性について必要ならば、…を参照」という一節を英訳するなら、

Please note, for the publicity, refer to …

ではなく、

If this is considered necessary in terms of reinforcing the remarks made in Z, please refer to …

が適切です。