150. 「実現する」と「take place」

企業パンフレットで見かける「Xグループは事業の発展と環境保全の両立を図った持続可能な社会の実現を目指しています。」という一文の英訳としては、

X group strives to achieve a sustainable society in which business interests and environmental preservation activities exist in harmony.

よりも、

X group is striving to achieve a sustainable society in which the development of our business interests and our environmental preservation activities can take place in harmony.

の方が適切です。「日本語の現在時制:英語の現在進行時制の翻訳」で示したとおり、この文は、和文の趣旨を適切に伝えるのに、何はともあれ現在進行形を使うことが不可欠である一例です。また、一次翻訳者が使った「business interests」という表現は、それだけを見ると、社長が自社ではなく業界全般について述べているという印象を与えてしまい、完全に誤解を招きます。この文は、翻訳者は文章全体の根底的な意味合いを翻訳するよう努めるべきであり、個々の単語を訳して満足するべきではないことを示す好例とも言えるでしょう。例えば、「our」という単語を2回使うことによって、英語圏の読者の理解度に格段の差が出ます。最後にもう1つ重要な点は、「development」に対しても、「activities」に対しても、使用すべき動詞は、「exist」ではなく「take place」であるということです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA