「福利厚生施策の利用に関する不公平感の是正および、福利厚生を取り巻く環境変化への対応をねらいとして」という一節を英訳するなら、

in an attempt to remedy a perceived sense of unfairness with regard to the company’s policy on recreation and welfare, and in order to cope with changes in the environment surrounding recreation and welfare issues

が適切です。この例文で特筆すべき点は、この企業の出版物において、「perceived」という語を使って、日本語の「感」に潜在する意味合いを伝えようとしていることです。原文の日本語表現は曖昧ですが、このような場合、英語では「perceived」という語を加えるのが特に重要です。「perceived」という語を加えないと、企業が以前の規定が不公平だったことを認めているかのように解釈される可能性があるからです。

同種の問題を示す好例として、ヘアカラー製品に使用される染料についてEUが定めようとしている規定に関し、日本ヘアカラー工業会のために準備された請願書が挙げられます。

日本ヘアカラー工業会 (Japan Hair Color Industry Association) は、自らの名称に米国式スペリング「color」を使用していますが、EUはその文書全体に渡って英国式の「colour」を使用しています。日本ヘアカラー工業会がその名称を通常どおり米国式に綴るのは当然のことですが、その請願書に好印象を抱いてもらうために、本文で英国式スペリングを使用することも重要と考えられます。

このような特殊な場合においては、全体を通して同一のスペリングを使用するのではなく、2種類のスペリングを適宜使い分けるのが望ましいでしょう。

特許に関する用語は次のセクションで扱いますが、むしろ本セクションに当てはまる例として、「オフィスアクションにおいてXとYとから本願発明は自明との認定がなされています。」という一文を英訳するなら、

In the office action, it is found that the present application invention is obvious over X and Y.

よりも、

In the Office Action, it is alleged that the present invention is obvious in view of X and Y.

の方が好ましいでしょう。英語では、議論、つまり意見の相違において、一方が他方の主張を認めているという印象を与えるような表現を使わないのが重要です。したがって、この例で「it is found that」という表現は避けた方が良いでしょう。一方が、他方の見解とは逆のことが事実だと主張している場合には、「it is found」ではなく、「allege」という語を使うことにより、相手の見解から距離を置いて自分の立場を守ることができます。

ちなみに、日本語の「本願発明」という語は、英語圏では「the present invention」と表現するのが普通です。