「機械本体の設計製作はZ社で行い、金型設計は当方で行い、製作はZ社でまとめてください。」

という一文を英訳する場合、これが、Z社に宛てた正式な協力依頼であれば、

I would suggest that Z-Company will undertake the designing of the machine main body, our company will undertake the designing of metal dies and Z-Company will again undertake the manufacturing.

よりも、

We suggest that Z-Company might undertake the design of the main body of the machine, that this company undertake the design of the metal dies and that Z-Company then coordinate the overall manufacturing process.

の方が適切で、厳密に言えば、

We suggest that Z-Company might undertake the design of the main body of the machine, that this company might undertake the design of the metal dies and that Z-Company might then coordinate the overall manufacturing process.

の方がさらに良いでしょう。和文はややくだけた響きで、情報の省略も見られますが、英訳時に特に重要なのは、丁寧な印象を伝えることです。そのために、動詞「suggest」の後に助動詞「might」を置きました。「might」を3回繰り返すのは好ましい書き方ではありませんが、間違いではありません。might以外の助動詞として、couldを使用し、「We suggest that Z-Company could undertake」と表すこともできますが、依頼という状況では、丁寧な印象を伝える「might」の方が良いでしょう。「it is important to avoid taking anything for granted (何事も当たり前と受け止めないことが大切)」という英語表現があることからも、書き換え後の文は好適です。

「お持ちの乗車券で白川郷にて乗り継ぐことにより、高山に行かれるお客様は、切符はそのままお持ちになり、白川郷10時発高山行きにご乗車ください。白川郷にてその他の高山行きにはお持ちの乗車券ではご乗車できません。乗り換えの際は、行き先を確認の上、お乗り間違えのないようにご注意ください。」という一文を英訳するなら、

Passengers who are travelling to Takayama should please retain the tickets they are holding, and change at Shirakawa village. Please transfer to the bus that leaves Shirakawa village for Takayama at 10.00 a.m. Please bear in mind that the ticket in your possession is not valid for use on any other buses that provide a service from Shirakawa to Takavama. Accordingly, at the time that you change bus, please do ensure that you get on the bus that is leaving for Takayama at 10.00 a m.

が適切です。この一節は、丁寧な指示を英訳するに当たっては、日本語が持つ究極の礼儀正しさを反映しつつ、曖昧にならないようにするために、極めて慎重に表現する必要があることを示す好例です。「Please bear in mind」と「please do ensure that」は、丁寧と毅然を併せ持つ便利な英語表現であり、顧客の利害を守る上で非常に重要です。

「ドアを開ける際には、タッセルを挟み込まないように注意してください。」という一文を英訳する場合、この文が指示マニュアルの一節であれば、

When closing the door, be careful not to catch the tassel.

よりも、

When closing the door, please take care to ensure that the tassel does not get trapped.

の方が好適でしょう。本質的な違いはトーンですが、命令しているような印象を相手に与えないようにすることが強く求められます。

「以上、こちらからの一方的な話になってしまいましたが、ケイ酸カルシウム製品製造メーカーとして、貴社の近況をお聞かせいただければ幸甚に存じます。」

という一文を英訳する場合、これが手紙の一節であれば、

「I do again apologize most sincerely for setting out the views of our company in such an unsolicited and one-sided fashion, but we would be most appreciative if you considered yourself in a position to give us the benefit of your views on how, as a leading manufacturer of calcium silicate products, your (esteemed) company views your own situation against the background of recent developments.

と訳すのが適切でしょう。

企業パンフレットに掲載されている「本報告書により、当社グループがどのように考え、どのような活動をしているかを、ひとりでも多くの方々にご理解いただけることを願っております。」という代表メッセージを英訳するなら、

It would give me the utmost pleasure if this booklet were widely read, and if it provided as many people as possible with accurate information toward understanding the environment and on our activities to preserve it.

よりも、

I very much hope that this booklet will be read widely, and that it will provide as many people as possible with an insight into our own understanding of the environment, and into the activities that we are taking to preserve it.

の方が良いでしょう。一次翻訳には重大な疎漏があり、環境というテーマの重要性に対する当グループの理解度を読者に理解して欲しいという社長の思いが伝わらず、読者が環境を理解してくれることを社長が期待しているという印象を与えてしまいます。

会社の手紙における「…について当社の意見を述べさせていただきます。」という一文を英訳するなら、

I‘d like to tell you our opinion about

よりも、

I would like to convey to you our views on

の方がはるかに適切でしょう。翻訳者は何よりもまず、英会話と、企業間の通信文などにおいて英語圏で伝統的に使用されている改まった表現との間にある厳然たるスタイルの違いを明確に理解しておく必要があります。

会社の手紙における「いただきたく思います」という一文を英訳するなら、

We‘d appreciate it.

ではなく、

We would much appreciate it.

または「We would be much appreciative if

とすべきです。

「Zの法令に基づいて説明して欲しい。」という一文であれば、

We would like you to explain to us

ではなく、

We would accordingly welcome your guidance, on the basis of Z Law.

です。最初の訳文も、文法的には完璧なのですが、法律家同士のかしこまった通信文という状況では、親しみが根底にあっても、会話調は不適切です。

「日本でのゼロからのブランド構築は、多大なコストを掛けた挙句、何の効果もない可能性もあると言われてきました。」という一文を英訳するなら、

It has also been said that building a brand name in Japan from scratch takes considerable amounts of (rather than 「lots of」) money, but entails a risk that in the end it may have no effect whatsoever.

とするのが良質な訳文です。これは、日常会話で受け入れられるスタイルと、正式な文書やパンフレットで求められるやや改まったスタイルとを翻訳者が区別する必要性を極めて端的に示した例です。

他の状況でも、スタイルとトーンに対する配慮が求められることは少なくありません。例えば、「お客様をお通しします。」という一節であれば、「show」よりも、「conduct a customer to」の方が、日本語の「お通しします」という表現が明確に表す品格と尊厳が伝わります。

ビジネスの世界では、英訳においても適切な調子を選択することが大切です。優れた翻訳者であれば、この点を常に心得ていることでしょうし、何よりも、陳腐な日本語表現の直訳やありきたりな翻訳を避け、その日本語表現が持つ特別な意味合いにふさわしい上質な英語を生み出す努力を惜しまないでしょう。

「他国の企業、大学との産学連携活動において、どのような工夫をされていますか。また、課題は何ですか。」という一文を英訳するなら、

What kinds of efforts have you been making to work out collaborative arrangements with enterprises and academic institutions in other countries? And what kinds of obstacles have been encountered in the pursuit of any such initiatives?

と訳すのが適切です。アンケートの翻訳では、「any」という単語が重要です。このような類のアンケートで、質問が連続しており、2番目の質問が最初の質問に対する回答にある程度関わっている場合でも、一切の仮定をしないのが賢明であり、「any」という単語を使用することにより、最初の質問に対する回答に、そのような活動が試行されていないという可能性を織り込むことができます。言い換えれば、「any」を省略すると、そのような活動が間違いなく試行されたという示唆を帯びてくるということです。ここで取り上げた例ではそれほど問題になりませんが、場合によっては、何かが該当することを示唆することにより、相手に挑発的な印象を与えてしまう可能性があり、そのような場合には、「any」を使用する必要性ないし所望性を慎重に検討する必要があります。

「当社HP」は、「our website」よりも「the Company website」の方がはるかに自然で、企業パンフレットに品格が加わります。

例えば、「当社HPでの社外公表内容と公表時期について検討する。」という一文であれば、

(The members) consider the details to be released to the public through our website and decide when they should be released.

よりも、

(The members of the Certification Council) should prepare details of what needs to be released to the public through the Company website and also reach a decision as to when these details should be released.

の方がはるかに自然な翻訳です。さらに、「社外公表内容」や「公表時期」といった日本語表現を安易に直訳するのではなく、英語では、それらが実際に意味するところをシンプルな語句で詳述することが大切です。